平成29年 アメリカ給食産業視察団旅行記

株式会社安全給食サービス 代表取締役 青木健児

平成29年11月5日から13日までの9日間、会員17社26名と日本給食サービス協会事務局、添乗員を入れ総勢28名でアメリカ西海岸のロサンゼルス、ラスベガス、サンフランシスコの3都市を回り、アメリカの給食事情を視察させていただきました。大変有意義で、貴重な体験をさせていただいた内容をここに報告させていただきます。

11月5日(日)

 10数年ぶりの海外旅行でパスポートを改めて取得。新幹線と成田エクスプレスを乗り継ぎ、遅れないようにANAカウンターでチェックイン。参加者との名刺交換の後、期待と不安が入り交じるなか、東団長の乾杯で出発結団式がスタートし、近畿日本ツーリストさんや東団長の話で緊張と不安はほぐれていき、和やかに進みました。
 17:00成田発 2回の機内食があり、9時間のフライトでロサンゼルス空港に到着。1時間待ちの入国審査を終え、バスに乗り込み市内視察。サンタモニカを回り、ファーマーズマーケットで各自昼食。緊張しながらも英語で注文し、無事に想定内のBLTが出て食べることができました。ハリウッドハイランドを回り、ホテルにチェックイン。一息ついた後の夕食は、ステーキハウス【NICK&STEF‘S】へ。本場のステーキに期待は高まります。最初のサラダに続き、メインのヒレ肉。焼きすぎかと思うほどのウェルダンでしたが、想像以上に柔らかく、岩塩をつけながらおいしく完食させていただきました。
 アメリカ2日目。朝6時にホテルを出発。バスの中で朝食のサンドイッチ弁当を食べ、1つ目の視察先【FOX STUDIO】へ。映画やテレビのドラマなどの制作をしているFOX社の現場には日々4,000~5,000人が働いています(撮影禁止のため写真はありません)。FOX社としては、スタッフが外食をせず、施設内で食べてもらうことで生産性が向上するため、ケータリング対応や手ごろな値段設定で要望に応えていました。さらに、季節のスペシャルメニューやネットでの情報発信、アンケートの実施、トレンドの一歩先を行くメニューの提供など、「ここで食べたい!」と思わせる魅力的なフードサービスへのチャレンジを日々行っているということです。
フードサービスをする側としては、地産地消とサステナビリティ(持続可能性)に取り組み、広く環境のことや将来を見据えた地域とのかかわりを意識した運営をすることで企業としての価値を高めていました。
 続いて2つ目の視察先【LAUSD FOOD SERVICE DIVISION】は学校給食のセントラルキッチンで、1日50~60校分、15万食をつくって配送しています。食数が桁違いで驚きましたが、調理済みの食材を、盛り付けてパッケージするのがここでの作業になります。

広い作業場で、流れてくるパックに食材を盛り付け、機械がパッケージしていました。ポテトやソーセージ、ミックスベジタブルなど、日本の学校給食と比べると内容がシンプルかなと思いましたが、なにしろ15万食なのでシンプルにならざるを得ないのでしょう。ここでも食材は地域の物を積極的に使う方針で、健康にも配慮された内容になっているということです。また、大量の食糧があることから、災害時に市や郡から頼りにされている施設でもありました。  午前中に2つの視察を終え、市内のモールのフードコートでランチ。早くも麺が恋しくなり、タイ料理の店でボリューム満点のチキンヌードルを食べ、お腹も気分も満足でした。  午後は、夕食のバーベキューパーティーに向けて、前菜、主食、主菜など、各班に別れ、買い出しです。私はデザート班になり、フルーツの盛り合わせとカボチャプリンをつくることに決めました。英語を駆使して、店員さんに聞きながら食材・商品を探し出し、予算内で購入。バーベキューコートに移動し早速エプロンをして調理開始!オーブンがないというハプニングを乗り越え、電子レンジでプリンづくりに挑戦。フルーツカットも見よう見まねで何とか完成。時間ギリギリにプリンを出して、パーティーのスタートです。各班腕自慢の料理が並び、お酒も進み、話も弾み、火を囲みながら盛り上がりました。限られた時間、限られた施設設備のなか、チームで話し合ってつくりあげる難しさと楽しさで、できたときには2倍の喜びがありました。

11月7日(火)

 3つ目の視察は【UCLA】。この大学の学食は全米大学No.1のダイニング施設です。UCLAの学生は4万人。それぞれのダイニング施設で特色を出し、学生の健康を支え、学生生活を豊かにしています。
レストランのテーマは、ここでも地域の食材の利用とサステナブル(持続可能)な食材の利用を謳っていました。サステナブルとは、オーガニックの野菜を使う、遠方から取り寄せない、絶滅危惧種を食材で使わない、飼育環境のよい牛を使うなど、環境や人類がいつまでもこのままの状態でいられるように活動することだそうで、アメリカでは主流の考え方になっているそうです。日本ではまだそれほど聞かない考え方なので、今後の勉強になりました。
2~3年生まで寮に入っている学生も多く、ダイニングプログラムを実施し、肥満にならないよう、食の教育を学食で行っていました。屋上で育った水耕栽培の野菜をサラダバーに使いながら、野菜中心の食生活を提案していました。  様々な、アプローチをする中で、学生の健康はもちろんのこと、卒業後の食生活のことまで考慮して、豊かな人生が送れるよう配慮している大学の姿勢はさすが全米NO.1だと思いました。  見学の最後にFEASTというダイニングで昼食。ここは、アジア系の食事を出す学食。実は学生の54%がアジア系ということで、この日もFEASTはアジア系の学生であふれていました。学生と同じように列に並ぶ学食気分を味わいながら、チャーハン、フォー、みそ汁、抹茶アイスなど本格アジア食を堪能し、UCLAに別れを告げました。  午後は一路、ユニバーサルスタジオハリウッドに向かい、半日自由行動。日本のUSJにも行ったことのない私が、本場を先に体験することに。時期的にタイミングがよく空いていてほぼ待ち時間なしでアトラクションに乗れました。たくさん歩きましたが、いろんなキャラクターにも会い、夢の国を満喫しました。

11月8日(水)

 ロサンゼルスからラスベガスへの移動のため、早朝3時30分にホテルを出発し、空路ラスベガスへ。
4つ目の視察先【the culinary academy of Las Vegas】は、料理人やベッドメイキングなどホテルでサービスするスタッフを育成する学校。到着後、多くのスタッフに迎えられ、教室で概要説明を受けました。
 この学校は、ラスベガスの街自体が質の高い労働者を求めていることから、経営者と労働者(ユニオン)が一体となってつくられた学校で、雇用内容を協議して決めたり、学校のカリキュラムや内容もお互いの声を聞きながら教育に生かしたりしているということです。
 バーテンダー教室、ソムリエ教室などそれぞれの教科の教室ではプロフェッショナルを育成。ベッドメイキング、ハウスクリーニングをトレーニングするフロアでは、ラスベガスの各ホテルに対応した部屋があり、即戦力の育成に力を入れていました。移民の学生もいるため、英語の語学学習教室や市民権取得をサポートする窓口があり、受け入れ態勢の充実が、ラスベガスのサービスの充実につながっていることを実感しました。
   料理人の育成では、学校内にレストランがあるので実際に営業に入り、調理をしたり、パーティー料理をつくったりと、実務に近い経験を積んでいました。また、別の実習室では、ホテルの料理長たちを集めて先生が調理を教えていました。ホテルが改装中の時や新しく建てている時は、料理長がこの学校に来て料理を教わるそうです。
 見学の最後には素敵なブッフェランチを出していただき、食べ放題。お腹いっぱいいただきました。
 日本の専門学校とは性格の違う、実務に則した学校でしたが、ラスベガスというリゾートシティを支えている経営者と労働者の想いが感じられました。  学校を後にし、ホテルに到着。40階建て2600室あるホテルで迷わないようにと説明を受け解散。夕食は【Lawry’s The Prime Rib】 でステーキディナー。最高においしいミディアムレアのステーキを頬張りながら、日本の給食業界ばなしで盛り上がり、あっという間に時間となるのでした。

11月9日(木)

 ホテルで朝食ブッフェを食べ、8時に【Death Valley】に向けて出発。世界最高気温(58.3℃)が記録された場所です。当日は30℃ちょっと、湿度はいつも数%しかないそうで気温の割には快適でした。白い塩の平原を、汗をかきながら歩き、アメリカの大自然に圧倒されながらも癒された1日でした。

11月10日(金)

 いよいよ最後の都市サンフランシスコへ。空港から直接5つ目の視察先、全米50位にランクされる急成長中の給食サービス会社【Epicurean Group】へ。受託先の一つ、シリコンバレーにあるオフィスビルの1階にある食堂を見学させてもらった後、用意していただいたブッフェを食べながら、会社説明を受けました。

 会社のテーマは〝fresh.honest.local.″。そして、以下の明確な方針で他社との差別化を図っていました。
 〇毎日違うメニュー、季節に沿ったスペシャルメニューの提供 〇素材から調理する(既製品を使わない) 〇地元の農家、パン屋から買う(移動が少ないので排気ガスも少ない) 〇業者からリベートはもらわない 〇新鮮で質の高い材料を使う 〇サステナブルな食材の使用(半径150マイル圏内から調達) 〇コーヒー豆など150マイル圏内で手に入らないものはフェアトレードで輸入 〇牛肉は牧草で育てた牛を使用 〇ホルモン剤、抗生物質の入った製品は使わない 〇できるだけオーガニック商品を使う、など。
また、Epicurean Groupは、従業員を大切にすることがお客様を大切にすることにつながるとして、教育プログラムや褒賞制度を充実させて、人材育成に力を入れていました。
ビルのオーナーがEpicurean Groupを採用した理由は、テナントの会社のスタッフの満足度、パフォーマンスの向上につながる質の高いサービスをするから、とのこと。企業の価値を上げ、優秀な人材を得るツールの一つに食のサポートが重要視されていました。
いわゆる社員食堂形式ですが、かなり質の高い食事を提供していたので、さすがはシリコンバレー、最先端を行っているなぁと感じるとともに、日本でも要望があったときに対応できる給食会社でありたいとも思いました。 視察研修がすべて終わり、夕食はジャパンタウンの居酒屋で乾杯。アメリカの中の日本という違和感の中、締めのラーメンもおいしくいただきました。

11月11日(土)

 アメリカ滞在最終日はサンフランシスコ市内を視察。市役所からツインピークス、ゴールデンゲートブリッジ、そしてフィッシャーマンズワーフでランチと、サンフランシスコ市内を凝縮して回りました
 午後は自由視察でお土産を買い込み、最後の夕食はチャイナタウンで中華パーティー。今までの研修を思い出しながら、食べきれない料理とともに楽しい宴となりました。

11月12日(日)

 8時にチェックアウト。空港で解散式をし、10時間のフライトで無事成田に到着しました。
今回の視察では、アメリカの給食業界がローカルな視点を持ち、継続可能な(サステナブル)活動をしていることがスタンダードになっていることを学びました。日本のこれからの給食運営にも参考にしていきたいと思います。
東団長、近畿日本ツーリストの添乗員知見さんには大変お世話になりました。大人数で何かと苦労が多かったと思います。紙面を借り、感謝申し上げます。

 そして、一緒に視察を共にしたメンバーの皆さんと交流を持てたことが、一番の視察旅行の実りであったことを心から感謝して筆をおかせていただきます。ありがとうございました。