平成30年 アメリカ給食産業視察団旅行記

メーキュー株式会社 衛生管理部 松野寿紀

  平成30 年11 月4 日(日)〜12 日(月)までの9 日間、会員12 社19 名と添乗員を合わせて総勢20 名でアメリカ西海岸のロサンゼルス、ラスベガス、サンフランシスコの3都市を訪問。現地の給食施設を視察させていただきました。ちょうど米大統領の中間選挙と重なり、テロなど心配していましたが大きなトラブルもなく順調に旅程を進めることができました。
  今回の視察ではアメリカの給食事情など把握することができ、大変貴重な経験となりました。ここにその内容について報告させていただきます。

11月4日(日)

成田⇒ロサンゼルス

9年ほど前、行くあてもなく作成したパスポートが偶然にも役に立つことになりました。
早朝から新幹線と成田エクスプレスを利用して一路成田空港へ向かいました。
到着後、案内に従い用意された部屋に集合。そして名刺交換。東団長の乾杯で団結式がおこなわれました。
初めての海外旅行というメンバーが多い中、東団長の「初めての方でもなんとかなります!」との一言で、場の雰囲気が和みました。
2度の機内食をいただき、飛行機がロサンゼルスに近づくと「現在の天気は曇り、気温は摂氏18度」との機内アナウンスに心が躍りました。ちょうど今日からサマータイムが終了とのことで、日本との時差はなんと17時間。
空港に到着すると入国審査に2時間を要しました。

待機していたバスに乗車し、サンタモニカへ。天気は良いのに日中でも霧が出ていて海岸を見ても遠くが眺めず残念。その後、フードコートで軽く食事。と言ったものの、出てくる料理はボリューム満点!
時間的に遅かったこともあり、夕食を考慮してここは完食を断念することにしました。
そして一行はファーマーズマーケットへ。ここは1934年から続くロサンゼルス随一のショッピング&食事スポットで盛りだくさんの食材が並んでいました。時間の都合で視察もままならず、次はハリウッドへ。アカデミー賞の授賞式でレッドカーペットが敷かれる階段を登り、有名なランドマークであるハリウッドサインを初めて見ました。映画好きの私にはこれ以上の幸せはありません。
さて、日も暮れていよいよ夕食。バスはステーキハウス【NICK & STEF’S】へ。
柔らかくで美味しい本場のステーキをワインと一緒に堪能して、至福のひとときを過ごしました。


11月5日(月)

ロサンゼルス

朝9時にホテルを出発。最初の視察先である介護施設【Sakura Gardens at Los Angeles】を訪問。ここは1969年にアメリカで日系人を対象とした初めての敬老ナーシングホームです。もともと日系引退者ホームの創設者である和田勇さんが日系人の新谷ジョージさんと協力して建設した5階建の施設で、127ユニットを有し、現在の入居率は90%。入居者は日系2世か3世の高齢者で、ほとんど日本語で話されていました。
日系人が多いこともあり、1994年には天皇陛下が慰問され、その時に皇后陛下が「移り住む 国の民とし 老いたまふ 君らが歌う さくらさくらと」と和歌を詠まれました。
また、日本の芸能人もよく慰問されるようで、過去には由紀さおり・さだまさし・八代亜紀・美川憲一さんなども慰問されているということでした。
人気メニューは、すき焼き・親子丼・うなぎ。やはり日系人ですね。しかしここはアメリカ。朝食はアメリカンスタイルとのことでした。食事する際にはあらかじめ作成された各階毎の入居者リストに入居者自らチェックをするルールがあり、チェックがないことで居室でなにか問題が起こったのかなど、体調の変化などを確認できるシステムになっていました。
概略説明が終わったあとで、2班に分かれて施設内を視察。中庭には池があり、錦鯉が悠々と泳いでいました。図書室もあり、日本語の本がずらりと並んでいて、入居者は自由に読むことができます。本のほとんどは日本人が寄贈されたそうです。
他にも琴や陶芸などの教室があり、さながら日本の有料老人ホームのようです。
入居費用は2,600〜3,200$/月で、高めに設定されていました。非常時にはすぐに非難できるとの理由で、1階の部屋が一番高く、階が上がるにつれて安く設定されているようです。このあたりは日本とは違います。
最後にキッチンを見学。食数の割には非常に広く、冷蔵庫を見ると、驚いたことにそこには「HOSHIZAKI」との文字が!まさに「MADE IN JAPAN」。日本人として少しばかり誇らしく思いました。
視察が終わり、夏を思わせるような暑さの中で、全員で記念撮影をして施設を後にしました。
さて、昼食。ハンバーガーショップ【IN–N–OUT BURGER】で本場アメリカのハンバーガーを頬張り、そのまま隣接するショッピングセンターで調理実習に使用する食材を買い出し。「オードブル」「主食・スープ」「焼き物」「飲み物」「調味料・消耗品」のそれぞれ5班に分かれ、グループ毎に予算に合わせて購入しました。アメリカのスーパーマーケットはスケールが大きく、量の多さに圧倒されました。私は調味料と消耗品類の購入担当のグループに指名されましたが3人でひとつの食材を捜すだけでもひと苦労。あらかじめスマホにインストールした翻訳アプリがここで大活躍!店員さんとスマホでコミュニケーションを取りながらなんとか無事購入したつもりが、後になって、調理用に購入したワインが、実はワインビネガーだったという「オチ」がありました。メンバーの皆さん、ごめんなさい。
一旦ホテルに戻り、プールサイドで調理実習を兼ねたバーベキューパーティー。
各班自慢の料理とお酒で話も弾み、お酒が入ったところで、あらためてメンバーが順に自己紹介。笑い話やカミングアウト有りで、業者の垣根を越えて楽しく有意義なひとときを過ごしました。


11月6日(火)

ロサンゼルス

8時40分にホテルを出発。今日の視察先は【Los Angeles Unified School District’s Central Kitchen】。ロサンゼルス統一学校区に食事を配送しているセンターです。
2階のフロアに案内され、施設の概略説明を受けました。この給食センターは、1965年にランチプログラムがスタートし、その20年後にブレックファストプログラムがスタートしたそうです。
今ではサパー(軽い夕食)も手掛けていて、1日の提供食数はなんと計80万食!桁が違います。内訳は60%がランチ、30〜35%がブレックファスト、残りがサパーだそうです。栄養についてもアメリカ農務省の厳しい規則があるようで、10年前からは糖尿病(タイプ1)に対する食事なども提供していました。
5年前に実施された調査では、子供の80%が朝食を食べていないことが判明、また体調不良を訴えていた子供たちの殆どが朝食を食べていない事実が明らかとなったことがきっかけで、健康食の提供に注力した結果、現在ではそのほとんどが解消されたそうです。あらためて朝食を摂ることの重要性を感じました。
また、食費の負担は世帯収入で決められていて、子供のおよそ80%は無料だそうです。
その後、数分間の紹介VTRを見てから施設内の視察がスタート。事前にネット帽子を着用しましたが、ユニフォームや専用の履き物もなく、マスクもしなくてよいとのこと。日本とは全く異なる対応に違和感さえ覚えました。
まず調理場に入って目を疑ったのはロボットがスピーディーにパックのシールや包装をしていたこと。その動きはまさに自動車工場。
驚きです!日本では調理員さんが手間暇かけて調理し、食缶に入れるのも人です。全くの別世界。これだけの食数をこなすための方法なのでしょうか?
次にサラダバーエリア。ここでは野菜やパンなどのパッケージをしていました。
現在では栄養士4名を配置して、アレルギーやダイエット食にも取り組み、1日あたり250〜300食をパッケージしているそうです。
箱には配送ドライバー名、配送先の学校名が記載されたシールが貼られていました。
そしてトラックヤードから冷蔵庫や冷凍庫を案内していただきました。
全体的に機械化されている印象が強く、工場のラインのように作業動線が敷かれていて、以下のように工程が明確化されていました。

  1. すでにカットされ、洗浄された野菜が納品される。
  2. 流れてくる容器に作業者が直接盛り付ける。
  3. 盛り付けた容器に機械が自動でフィルムを貼る。
  4. カゴに手作業で詰める。
  5. フォークリフトでトラックに積み込む。

また、食材が入ったパックを、ロボットが目を見張るスピードでレーンに流している場面にも遭遇しました。
ひと通り見学を終えて、再び2階のフロアへ。
見学者からの質問コーナーとなり、メンバーからの活発な質問。衛生管理を担当している私も、手洗い設備にアルコールを見なかったことについて尋ねましたが、手洗い洗剤で「ゴシゴシ」徹底的に洗うことで問題ないとの回答。日本が厳しすぎるのか、或いはアメリカが緩すぎるのか?悩むところです。
過去の食中毒については1940年くらいに一度あったようですが、それ以降は食材のリコールしかないということでした。
アメリカは訴訟社会であるため、日本に比べて従業員ひとりひとりが衛生意識を持っていることが要因ではないかと推察されます。その点では私たちもパート従業員への衛生意識を醸成する事が重要ではないでしょうか?
最後に食品のサンプルをいただき、虹色をあしらった当施設のマスコットキャラクター(カフェ・アンバサダー)が登場。記念撮影にも参加して施設を後にしました。
午後からはユニバーサルスタジオハリウッドへ。施設内のフードコートで昼食をとり、その後自由行動。

日本のUSJとはまた違った本場ならではのアトラクションを堪能し、楽しい時間を過ごしました。待ち時間は10分程度、日本では考えられない待ち時間に、次から次へとアトラクションを楽しみました。

11月7日(水)

ロサンゼルス⇒ラスベガス

ホテルを6時半に出発。あらかじめ用意された朝食を持参してロサンゼルス空港へ。ここで朝食をいただき、ラスベガスへテイクオフ。
ラスベガスはロサンゼルスと比較すると、気温も低く湿度が低いためカラッとした陽気でした。そのせいか目がすぐに乾くので、持参した目薬が大活躍です。
途中「Bellagio Hotel」に立ち寄り、ロビー奥の中庭を見学してから視察先の【Aria Resort & Casino Hotel】へ。
ここは過去に視察を受け入れたことがなかったようで、我々視察団が一番乗りとなりました。ホテルの面積は150万スクエアフィート。坪数に換算すると、なんと42,000坪!部屋数は4,000室で従業員数7,000名!想像を絶する規模です。
空調に最新のテクノロジーを搭載。天井からではなく、床下から送風するシステムを採用していました。
社員食堂は「CROSSINNG」と命名されていて、「1日1回は必ず通る場所」という意味だそうです。調理従事者総勢65名、昼食は16名で対応。営業は24時間体制で運営されていました。
視察開始です。ここでは帽子を着用することもなく、そのまま調理場内の見学ができました。作業者も同様でした。このあたりは考え方の違いでしょうか?
まずはペイストリーの調理室。ここはスイーツなどを作っている部屋。冷蔵室は摂氏1℃に保たれていて食材はパレットに置かれ、食材別に定位置管理がなされていました。冷蔵室の外に出た際、前述したように湿度が非常に低いため、眼鏡が全く曇りません。調理室内には従業員用のウォーターサーバーが設置されていたので理由を尋ねると、「湿度が低いために自然に体から水分が奪われるので…」という答えが返ってきました。汗をかくために水分補給をする日本とは違い、二重の驚きです。そして手洗い場を見ると、洗剤には「ECOLAB」の文字が!さすがに本場アメリカの洗剤を使用していました。
設備に目を向けると、40ポンド(約18kg)のチョコレートを流し込む機械が稼働していて、非常に甘い香りが漂っていました。すでに年末のプロジェクトが進行していうという話もありました。
完成したケーキを1,000分の1インチの精度でカットできるケーキカッターを備え、1分間で140個にカットする実演をしていただきました。
次に地下2階にある食材倉庫に案内されました。食材別に倉庫が10室あり、その広さにびっくり!まるで「Amazon」の倉庫のようでした。この倉庫は、なんとプールの真下にあたるそうで、またまたびっくり!
在庫管理を質問すると「First in first out!」と答えが帰ってきました。我々が言うところの「先入れ先出し」ですね。
最後に下処理室を視察。ハンバーグを3〜7オンスまでに設定できる成形機、ソーセージをカットする機械、そしてカットした肉をプレスして厚みを調整できるプレス機械など、給食ではあまり見ることのない設備等を見せていただきました。
床が滑りやすいため、作業台の下にシリコン製の滑り止めが敷かれていたことに気づきました。転倒災害防止に参考になります。
見学終了後には社員食堂で従業員の皆さんと昼食を一緒にいただきました。メニューは「健康促進チーム」が作成し、また従業員からの相談にも対応していました。
帰り際にデザートのお土産をいただき、非常に気持ちよく視察することができました。
視察が終わり、ホテルにチェックイン。

夕食は【Lawry’s The Prime Rib】でディナー。250gのステーキを堪能し、メンバーとの情報共有ができました。

11月8日(木)

ラスベガス

 今日は朝からバスで【Death Valley】へ。暑さ世界一でギネスブックにも載っている場所です。過去最高気温はなんと58.3℃。
ここは縦20km、横250kmの盆地で、海抜はマイナス53m。1997年に「デスバレー国立公園」に指定されました。到着すると一面真っ白!もとは塩湖だったのが、高温と乾燥の中で長い時間を経て干上がり、塩田になったとのこと。複雑な地形とどこまでも続くその壮大な姿を目の当たりにし、大自然を満喫することができました。
帰りは地元のスーパーマーケットに寄り、プレミアムアウトレット・ノースで買い物をして、その後メンバーでラーメンを食べに行き、ホテルに戻りました。


11月9日(金)

ラスベガス⇒サンフランシスコ

ホテルを早朝5時半に出発。いよいよ最終目的地であるサンフランシスコへ。飛行機の離陸が1時間半も遅れるトラブルがありましたが、無事に到着。空港に到着すると何やら煙の臭いが辺りを包んでいました。前日にこの時期としては珍しい山火事が発生したらしく、晴れているにも関わらず、空全体が曇っているように見えました。
さて、待機していたバスに乗り、本日最初の視察先である【The Edible School yard Berkeley】へ。
オーガニックを取り入れた給食の提供を推進している非営利団体です。バークレー市で1995年に建設された一番大きい中学校「MARTIN LUTHER KING SCHOOL」の食堂を中心に活動されていました。まず最初に6$を支払い、実際に提供されている昼食をいただきました。生徒は3$の補助が出ているそうで、低所得層は無料だそうです。
メインは3種類からの選択制で、サラダはバイキング方式。スプーンやフォークはプラスチック製。容器も紙製のディスポ食器を使用していました。オーガニック野菜ということもあり、食感はシャキッとしてみずみずしく、野菜の旨味がそのまま生かされていました。
昼食後、別棟の調理教室に案内され、説明を受けました。
給食は学校側が運営、当団体が調理や食文化などの教育を請負っていて、パートナーシップを締結。学校の敷地内にあった駐車場を菜園にして、そこで生徒と一緒に野菜の栽培をするなど、食育に力を入れていました。
この教室では、菜園で収穫した食材を使って調理の試作やメニューの作成などの勉強をしていて、給食にも提供されます。そして残菜はコンポストで堆肥化され、あらたに野菜の肥料にしていました。
教育担当のアンジェラさんは「子供達は食材がどこから来るのか知らない。ある子供はスーパーから来ると言っている。一緒に野菜を作り、勉強することで、子供たちが興味を持つようになることが大切。」と言うことでした。
また、バークレー市は健康にも注力していて、法律によりコーラなどの砂糖が入ったジュースに1缶あたり数セントの税金が徴収されるそうです。その税金で団体が運営されているとのこと。また、当地域の肥満率は他の地域と比較すると低下傾向という話も聞きました。
この仕組みを他の学校にも展開していきたいと力強く語っていたのが印象的でした。
そして次の視察先【CALIFORNIA ACADEMY OF SCIENCE】へ。
サンフランシスコにある科学博物館で、館内のカフェテリアとテラスカフェを案内していただきました。多い時は1日2,000〜3,000食。少ない時は800食の提供をしているそうです。また、パーティー食などケータリングにも対応していて、視察時はまさにその調理の最中。厨房内が狭いこともあって、厨房内を迷惑がかからないよう素早く視察しました。
施設全体の従業員は400名で、調理従事者は総勢70名。うち昼食は20名で運営しているそうです。従業員もカフェテリアで食事をしているとのことでした。
このカフェテリアは環境に配慮していて、フォークやスプーンなどにプラスチックを使用せず、自然に分解される素材を使用していること、また、洗剤も木が枯渇しないようパームオイルを使用しないことなど、徹底した環境対策をおこなっていて、大変参考になりました。
夕食はフィッシャーマンズワーフにある【Swiss Louis】でディナー。サンフランシスコ名物の蟹を丸ごといただきました。そのまま食べても美味しく、我を忘れて堪能していました。


11月10日(土)

サンフランシスコ

いよいよ滞在最終日。今日はサンフランシスコ市内の視察。ゴールデンゲートブリッジや市役所、ユニオンスクエアを回り、午後は自由散策。
そして最後の夕食は【FIOR d’ ITALIA】でフェアウェルパーティー。
イタリアン料理をいただきました。
初日と比べ、いつのまにかメンバー同士が仲良くなり、一体感が醸成され、情報共有できたことは我々にとって大きな財産となりました。

添乗員の三重野さんへお礼のプレゼントを渡したときの感激した様子にメンバー全員が感情移入していました。

11月11日(日)

サンフランシスコ⇒成田(帰国)

早朝8時にホテルを出発。一路サンフランシスコ空港へ。
11時間のフライトの後、無事成田空港へ着陸。

 

<あとがき>

今回の視察でアメリカの給食事情を認識することができました。私の業務上、衛生管理にも興味がありましたが、機械化を推進するシステマチックなアメリカと属人的でお客様目線である日本の考え方、そして食文化の違いが垣間見えた気がしました。
最後になりますが、今回の施設団団長である東社長、日本旅行添乗員の三重野さん、そして各現地で案内をしていただいたガイドの皆さんにはこの紙面をお借りして厚く御礼申し上げます。
また、視察を共にした各社メンバーの皆さんと過ごした日々は、大変貴重な経験であり、本当に充実した素晴らしい日々を過ごすことができました。
食に携わる者同士が、日を追うごとに同じ会社の仲間のように和気藹々とした雰囲気で交流することができたことに感謝し、今回の旅行記とさせていただきます。
また皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。