平成27年度 アメリカ給食産業視察団旅行記

株式会社魚国総本社 管理本部 高橋和郎

平成27年11月8日から16日までの9日間、北アメリカ大陸を東海岸のニューヨークから西海岸のロサンゼルスまで、横断するかたちでアメリカの給食事情を視察させていただきました。事業としての給食だけではなく、州政府機関の移民のための訓練センターやNPOのホームレス支援施設を視察する機会もございました。現在のアメリカの「食」に関わる問題の一部を垣間見る事ができ、大変有意義な視察旅行となりましたことを、ここにご報告させていただきます。

■平成27年11月8日(日)

雨 気温18℃ 成田 ⇒ ニューヨーク
 今回の視察旅行は日本給食サービス協会と会員会社15社から総勢24名及び1名の添乗員という構成になっています。全国から集まった参加者のみなさまは、それぞれの会社から選ばれた代表者として堂々とした風格を感じます。
 名刺交換を行いながら、相手方の表情と事前に渡されていた名簿の顔写真の記憶との照合を試みますが、緊張の為か全く憶えられません。早々と3人目で諦める事にしました。これから時間はたっぷりあります。
  全員が揃い結団式が始まりました。お互いに紹介し合うと、そこは同業のよしみ。和やかな雰囲気で視察旅行が始まりました。
17:40発、13時間のフライトで成田空港から最初の目的地のニューヨークのニューアーク空港に到着しました。入国審査待ちの長蛇の列にため息が出ますが、飛行機の座席に縛り付けられているよりは幾分か気が楽でした。 ホテルに荷物を下ろすと、夕食のためホテル前のグリル&バー【APPLEBEE'S】へ移動しました。機内食の後の食事に期待は高まります。先ずはシーザードレッシングがたっぷりとかかった山盛りのサラダで、早くも満腹になってしまいました。続いて200g強のステーキにたっぷりのマッシュドポテトとボイル野菜。アメリカンサイズというものでしょうか。しかし、想像以上に柔らかい赤身のビーフは大変美味しく、満腹感で意識が朦朧となりながらも完食することができました。そして、予期せぬとどめの山盛りアイスクリームでギブアップ。初日はこれで解散となりました。

■平成27年11月9日(月)

晴天 気温10℃ ニューヨーク
 最初の視察施設の【CALHOUN SCHOOL】はマンハッタンの中心部に位置する私立の小中高一貫校で、在籍生徒数は約700人います。この学校は革新的な信念のもと教育を行っていることで有名で、アメリカ国内および我々と同様に海外からの視察団が視察に訪れます。
 全ての活動が教育であり、食事もその一環。生産者が明確な自然食材のみを使用し、それら食材を使った食事も当然手作り。他学科の授業内容に関連した食事の提供、自然食材の大切さを理解してもらうための食事時間中や厨房での実践教育、他地域や他国の様々な食文化の教育、食材の生産者・生産方法・産地、子供達自身にどれくらいの量の食事が必要なのか等、食に関わる健康、科学、文化、経済、政治・・・etcを子供達の日々の生活や授業に食育プログラムを取り入れています。
 この学校には屋上菜園があります。これはマンハッタンという土地柄、耕地や緑地が確保できないためです。ここも重要な食育の場として活用されています。
 視察の終わりにシェフのMr.ボボが野菜スープを振舞ってくださいました。このスープにも彼らの食に対する信念が注がれており、自然食材と手作りによる心と体に優しい美味しいスープでした。ありがとうございました。
 ここからは自由行動の時間です。ニューヨークの路上には色とりどりのフードトラックや屋台カートが数多く出店しています。
 その中でも一際目立って繁盛している黄色と赤の屋号の「HALAL GUYS」の屋台の列に並ぶ事にしました。名前からするとハラル食を提供しているのでしょう。どの商品も$5または$7という価格設定になっています。この屋台の主力アイテムらしき「COMBO OVER RICE」なるものを注文しました。彼の手には分厚いドル紙幣の束が握られており、紙幣だけで精算できる価格設定も、アメリカらしいと感じました。
 我々視察団一行はマンハッタンでの自由行動を終え、夕食のBBQ用食材を買い出しへ行きました。
これは日本給食サービス協会主催の視察旅行での恒例行事であり、この行事が視察旅行序盤の最重要課題と聞かされています。24名はオードブル、主菜、BBQ食材、デザート、飲料&スープ、調味料&消耗品の6チームに分かれ、45分以内にメニューを考案し必要な食材を調達しなければなりません。チーム内、チーム間の協力が必須です。
 各チーム、日本とアメリカの食文化の違いを目の当たりにしました。日本のどのスーパーにもあるものが、ここにはありません。たとえ、あるとしても店舗が広すぎてなかなか見つかりません。皆で相談をし合い、連絡を取り合い、足が棒になるほど店内を駆け回りました。
 買い出しを済ませ宿に戻ると、早速夕食の準備。我々に与えられた時間は2時間。ここでも各チームに分かれて、宿泊部屋にあるキッチンで作業を行います。運動会さながらの慌ただしさです。昨日会ったばかりのメンバーで構成された即席のチームですが、素晴らしいチームワークを発揮し手際良く準備を進めました。
 2時間後の夕食のテーブルと外のBBQコーナーには、限られた時間、食材、設備で準備したとは思えない素敵な料理の数々が所狭しと並べられていました。どの料理も大変美味しく、我々のスキルの高さとチームワークに乾杯をし、交友を深め、大変素晴らしい一日となりました。ありがとうございました。

■平成27年11月10日(火)

雨 気温13度 ニューヨーク ⇒ ラスベガス

 本日はニューヨークからラスベガスへの移動日ですが、昼過ぎまでニューヨークの街を見学することに。
 昼食はマンハッタンで人気のあるハンバーガーショップ「SHAKE SHACK」へ。肉厚のパティからシズル感溢れる美味しそうなハンバーガー。価格は$16。もうファーストフードとは呼べないプレミアムハンバーガーでした。マンハッタンには日本の500円ワンコインのような価格設定のランチはあるのでしょうか?
 3日間のニューヨーク滞在では、食材の調達から外食まで、この街の食文化に少しばかり触れる事ができました。

■平成27年11月11日(水)

晴れ 気温15度 ラスベガス ⇒ グランドキャニオン ⇒ ラスベガス

 本日は07:30にグランドキャニオンへ向けて出発。皆と昨夜のカジノでの戦績の話で盛り上がりました。ビギナーズラックも含めて、快調な滑り出し。
 最寄の空港からセスナ機で、グランドキャニオンまで約450kmのフライト。
 とにかく広い、高い、深い、遠い・・・。ボキャブラリーが足りず、そんな感想しか出てきません。厳しい自然が織り成す雄大な景色は余りにもスケールが大き過ぎ、何を見ているのか実感が湧きません。暫し雄大な自然を堪能しラスベガスへの帰路に就きました。

■平成27年11月12日(木)

晴れ 気温12度 ラスベガス

 今朝も昨夜のカジノでの戦績報告をしながら、朝の挨拶となりました。昨日と比べると、皆一様に口が重くなっているように感じたのは気のせいでしょうか。
 本日の視察先【Nevada Partnership Center】へ。ここでは行政(ネバダ州)と民間会社(ラスベガスの場合、多くはホテル・カジノ関係企業)が協力し、移民や就業希望者に対して職業訓練を行う事により、長期的な雇用の安定化を目指しています。ネバダ州で就業を希望する移民の多くは、より良い条件で職業に就く為にこの施設を訪れます。施設内には、語学教室から各種専門業務の教室、実際のホテルを模したスタジオ、本格的なカジノホテルのスタイルの厨房が備わっており、実地の経験を得る事が出来るようになっています。語学の教習や履歴書の書き方からルームメーキング、清掃、調理etcのホテル関連業務全般に必要なスキルの訓練を3ヶ月間受ける事ができ、修了した生徒に対しては修了証を発行されます。この修了証はネバダ州内に於いて、その業務に1年間就いたことと同等の証となります。就業希望者にとってはその修了証がネバダ州での履歴書となり、また雇用者側にとっては、修了証は就職希望者の技能レベルを一定に評価するための基準となります。現実の雇用となると現従業員からの紹介によるものが多く、職業訓練校の修了証だけでは本人が希望する職種に就く事は困難だそうです。
 移民と雇用の問題を抱えるアメリカの現状を垣間見る機会となりました。その施設のスタッフから直接お話を聞くことができ、彼らのこの仕事に対する使命感と情熱が伝わってきました。
 夕食はプライムリブの専門店【LAWRY'S】へ。特製のスパイスを塗って焼いたプライムリブ(骨つきローストビーフ)は、各自の目の前で好みの焼き加減の部位を約2~3cm厚でスライス。やはりここでもアメリカンサイズの洗礼を受けました。質と量ともに大満足の逸品でした。厚切りのプライムリブを心ゆくまで堪能させていただきました。ごちそうさまでした。

■平成27年11月13日(金)

晴れ 気温12度 ラスベガス

 本日は早朝03:45にホテルのロビーに集合してロサンゼルスへ向けて出発しました。
 本日の視察先【Grand Central Market】へ。地元のヒスパニック系の人が利用しているマーケットで、メキシコ料理の食材やファーストフード店が軒を連ねています。暗めの照明の下、色とりどりの野菜や果物、調味料等が並べられており、マーケット全体が陽気でそれでいてどこか怪しげな雰囲気に包まれています。タコスの店がいくつかあり、お値段$3程度。手際良くトルティーヤを水で戻している間に、肉や野菜のトッピングをリズムよく刻んでいきます。見ているだけでも楽しいです。調理においての衛生に関する詳細解説は別の機会にさせていただきます。
 時間にして3分ほどで出来あがり。手渡された商品のまん中には墓標のようにフォークが突き立てられていました。日本でこれをやったら怒られます。
 豚肉、パクチー、野菜類、フライドオニオン等を刻んだものにライムを搾り、トルティーヤで挟んで食べます。パクチーとライムの味と香りが食欲を刺激。一口食べた瞬間にタコスの魅了に取りつかれてしまいました。是非、日本で再現してみたいです。
 次の視察先【Union Rescue Mission】へ。この施設はホームレスを支援するNPOとして1891年に設立されました。現在、ロサンゼルスには約8,000人のホームレスがいます。女性や子供達を対象とした更生プログラムや、麻薬とアルコール中毒者を対象とした更生プログラム、UCLAの医学生による医療サービス等が用意されています。それらを全て無料で提供しています。基本的に運営は寄付とボランティアで成り立っています。食堂が併設されており、毎日約1,000食の炊き出しも寄付とボランティアでまかなっているとのこと。メニューは寄付された食材によって臨機応変に1週間単位で作成します。クリスマス等のイベント時には特別な食事を用意し、利用者を楽しませる努力も怠りません。ちなみにこの施設の食事は、どなたにも無料で提供されます。
 アメリカでは寄付やボランティア活動は一般的に広く行われており、需要と供給の橋渡しをする機関も充実しているとのこと。ここ【Union Rescue Mission】ではキリスト教の教えに沿った活動をしており、スタッフが自然体で仕事に就いておられる事が印象的でした。
 次は【The Gas Company Tower】内の従業員食堂へ。こちらはコンパスグループが受託している食堂です。対面で提供される料理はほとんどがセルフオーダー式になっており、主菜や副菜は種類と量を自分の好みでオーダーをすることができます。レストラン内で食事をするのか、または自席へ持ち帰り食事をするのか、持ち帰り方法も選択できるようになっており、持ち帰りの場合は使い捨て容器を選択できます。どのコーナーのスタッフも利用者ひとり一人に対して非常に時間をかけてゆっくりと対応しているのが印象的でした。混雑時にはいったいどのように変化するのか?変化しないのか? サービスの提供側と利用側の関係は、日本のそれとは少しばかり違うのかもしれません。これは個人的な今後の研究課題とします。
 広く清潔な厨房には利用者からの感謝や励ましの便りが掲示されており、従業員のモチベーション向上に役立っています。HACCPの概念も取り入れられているらしく、いくつもの注意喚起の掲示物が見受けられました。日本の給食現場で抱えている衛生に関する課題はアメリカでも同じであり、従業員の衛生教育が大きな課題となっていることが伺えました。
 異文化の給食産業施設のため、そのフロアレイアウトやサービススタイル、食材やメニューetcは、そのまま日本に取り入れる事の出来るアイデアばかりではありませんが、日本と比較することにより今までにない切り口の発想が生まれるのではないかと感じます。
 次の視察先【FARMAR'S MARKET】へ。ここは生鮮食料品店や屋台レストラン、土産店など約200店舗ほどのお店が軒を並べる市場。ロサンゼルスで様々な国の食文化を一度に体験できる場所としては最適な場所です。観光客だけでなく地元の人も利用しており、ロサンゼルスの生活に密着した場所です。
 夜は視察団全員で【NICK&STEF‘S STAKEHOUSE】へ。店名の通り、ステーキのお店。以前は「アメリカンビーフは赤身で硬くて美味しくない」と勝手に思い込んでいましたが、それは大きな間違いでした。行く先々でいただいたステーキは、敢えてウェルダンを注文したにもかかわらずどれも柔らかくジューシーであり大変美味でした。これだけでもこの視察旅行に参加させていただいた事に心から感謝をいたします。ごちそうさまでした。
 視察の日程も残すところあと一日となりました。既に皆が旧知の間柄のように打ち解けており、笑いの絶えない大変楽しい食事会となりました。

■平成27年11月14日(土)

晴れ 気温25℃ ロサンゼルス

 本日はロサンゼルス市内の視察からスタート。
 その後サンタモニカ視察に行くグループとNBAの試合観戦に行くグループの2グループに分かれての視察となりました。
 サンタモニカ視察のグループはルート66や青い空とビーチを、NBAの試合観戦チームはロサンゼルス・クリッパーズとデトロイト・ピストンズのカードを、それぞれ満喫しました。
 アメリカ最後の夕食はアメリカンビーフではなく、チャイニーズ料理店【EMPRESS PAVILION】へ。内心ホッとしていたのは私だけではないはず。
 全員で過ごす最後の夜ということで、別れを惜しみながらの宴となりました。

■平成27年11月15日(日)

晴れ 気温25℃ ロサンゼルス ⇒ 成田

 本日は日本への帰国日。視察旅行初日にはたっぷりあると思っていた時間は、あっという間に過ぎ去りました。ホテル前で撮影した集合写真が全員での最後の写真となりました。皆が出会った初日とは違う表情になっていました。

■平成27年11月16日(月)

晴れ 気温19℃ 成田

 ロサンゼルスから成田へのフライトの12時間は、4本の映画と2回の食事に費やしました。
今回の視察旅行では、教育、行政、NPO等と各種施設にて直接現場の方々からご講話をいただき、大変貴重な経験となりました。皆それぞれが社会での自身の役割を理解し、使命感と誇りを持って仕事に就いておられることが非常に印象的でした。また視察団一行の各社のみなさまの考え方、視点や切り口は、私にとって新鮮で刺激的であり多くの事を学ばせていただきました。共に過ごした9日間は業態や会社を越えたものになり、公私ともにかけがえのない経験となりました。
※1ドル=122.78円(帰国日平成27年11月16日現在)
今回の視察旅行記の最後に紙面をお借りして、東団長の企画立案から開催に至るまでのご尽力、日本給食サービス協会のご配慮、視察旅行へ送り出してくださった会社並びにご関係者みなさまのご理解とご協力、近畿日本ツーリスト株式会社並びに添乗員様のご協力、そして参加者みなさまの温かいチームワークに心から御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。